【SDGs企業の失敗から学ぶ】巨大企業ネスレ全米で報道された水資源批判とは?

企業のSDGs(エスディージーズ)対応の批判 ネスレ編

●はじめに
近年、SDGs対応が企業の急務となっています。
持続可能な開発目標を掲げ、地球環境や社会問題への積極的に貢献することの大切さが叫ばれてきました。
しかし、データが不明瞭だったり、実際の取り組みが伴っていなかったりすると、批判の的になることがあります。
説明が不十分だというだけで、疑いの目を向けられることもあるのです。
当シリーズでは海外の事例をもとに、物議を呼んだSDGs対応をご紹介します。
今回取り上げるのは、グローバルに展開する巨大複合企業「ネスレ」です。

●「サステナビリティに配慮した」ミネラルウォーター

ネスレは、多角的な商品・ブランド展開を行っています。
ミネラルウォーターひとつとっても、多数のブランドを持ち、販売地域の広さや規模も様々です。
アメリカの中西部、カナダと接するミネソタ州にも、そんなブランドがあります。
Bottled Water | Ice Mountain? Brand 100% Natural Spring Water
https://www.icemountainwater.com/

アイスマウンテンというブランドのミネラルウォーターは、主に五大湖周辺の地域で販売されています。
アメリカ有数の豊富で良質な地下水を商品化し、地域を代表するブランドにまで成長しました。
2016年、このブランドが猛烈な批判にさらされる事態になりました。
なぜ、そのようなことになったのでしょうか。

フリントにおける飲料水の危機

ミネソタ州の小さな町・フリントでは、ある異変が起きていました。
2014年ごろから、住民の間でレジオネラ菌による健康被害が急増したのです。

sachiko

ちょうどフリント市の水道の水源を、近くを流れるフリント川に変更した直後の出来事でした。

汚染された水道水が原因とされ、塩素の添加などの対策が行われるようになります。
調査と対策が進む中で、新たな問題が浮上しました。
フリント川の水は腐食性が強く、古くなった鉛の水道管を溶かし、深刻な鉛中毒の原因になっていたのです。
結果として、フリントの水道水はトイレを流すしかできないほどに品質を落としました。
長い財政危機に苦しんでいたフリントでは、そんな水道に対して月180ドルもの料金を払わなければならなかったのです。

アイスマウンテンの取水地

市では、緊急支援策としてペットボトルのミネラルウォーターの配給を始めました。
ネスレも支援を申し出たので、安全な水を確保することはできたのです。
しかし、先ほど紹介したアイスマウンテンの取水地と製造工場は、フリントのすぐそばにありました。

豊かで良質な水に恵まれているはずのミネソタ州で、先進国とは思えないような水道汚染が広がっていること。
手軽に手に入るはずの水道水が思うように使えず、住民が苦労を強いられていること。
使えない水道に月180ドル支払う住民がいる一方で、ネスレは年200ドルの事業料を支払うだけで水資源を利用し、膨大な利益を得ていること。
そんな中、住民が近隣の水を詰めたネスレのミネラルウォーターの配給に並んでいること。
これらの事実は、猛烈な矛盾として全米で報道されました。

ネスレと水源の問題

実のところ、ネスレの事業と今回の事例には直接の因果関係は認められていません。
それでも、ネスレのせいで地下水が枯れたからではないか、というような疑念は根強く存在し続けました。

sachiko

それは、アメリカのいたるところで、ネスレのミネラルウォーターの工場ができた付近の水源が枯れたり水量を減らしたりしていたからです。
はっきりと断定できない不信感が積もり積もって、フリントの水道危機をきっかけに爆発したのかもしれません。

水道水が使えないなら、ボトルの水を使えばいい?

アメリカの「ガーディアン」誌では、当時のフリント市民の生活を伝えています。
赤ちゃんを沐浴させるのに、室温にしたペットボトルのふたを開け、子供用のバスタブに入れて、と何度も繰り返して水を貯めなくてはなりませんでした。
ある人は、車で何時間もかけて親戚の家までシャワーを浴びに行っていました。
フリントの水道水では、犬に飲ませることも、植木にやることもできませんでした。

アメリカでは、水道は無料あるいは低い料金で安全に利用できて当たり前、という考え方があります。
しかし、2000年代前半ごろから、財政危機に陥った州では、水道などの生活基盤に対する支出を削減する動きが活発になりました。
その結果、水道水の品質管理がおろそかになり、高額な水道料金を払わなくてはいけない状況が生じたのです。

きれいな水を得る権利

この状況に、手を取り合って立ち上がったのは、地元の住民たちでした。
辛抱強い訴えと綿密な調査の結果、明らかになったのは以下のような事実でした。

きっかけは、上水道用の取水地を変更する工事でした。
新しい取水地に切り替えるまでの間のつなぎとして、より安い水源であるフリント川の水を利用することになりました。
しかし、水質調査が不十分で、塩素の添加すら満足に行われなかったため、レジオネラ菌と鉛中毒による健康被害が続出したのです。

住民たちは、きれいな水道水を得ることは自分たちの権利だと主張しました。
水道管の交換や水質のコントロールが行われ、現在では安全な水道水が戻ってきています。
しかし、長期的な健康被害に悩み続けている住民は少なくありません。
また、フリントは黒人の住民が多く、行政にないがしろにされたのは人種差別が原因だともいわれています。
2021年現在も、当時の市長や行政官への訴追が続いています。

●まとめ
言わずと知れた大企業、ネスレの事例を取り上げましたが、いかがだったでしょうか。
生活インフラの経費削減や民営化による問題は、今後どこででも起こり得ます。
海外の事例に学んで、動向を注視していきたいものです。

該当するSDGsの項目

今回取り上げたテーマは、SDGsの17の目標のうち6個目の「安全な水とトイレを世界中に」に該当します。
「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」という目標のもと、「2030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。」という達成基準項目が掲げられています。

SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」企業の取り組み、企業研修

参考・引用
グリーンウォッシング(グリーンウォッシュ)って具体的にどういうこと?気をつけたい5つのタイプ | THE LITTLE WHIM
https://thelittlewhim.com/2020/09/09/5-types-of-greenwashing/
5 TYPES OF GREENWASHING // reacting to greenwashing ads and products
https://youtu.be/BjZzLGj5yGM
Nestl? pays $200 a year to bottle water near Flint ? where water is undrinkable | Michigan | The Guardian
https://www.theguardian.com/us-news/2017/sep/29/nestle-pays-200-a-year-to-bottle-water-near-flint-where-water-is-undrinkable
The fight to stop Nestl? from taking America’s water to sell in plastic bottles | Water | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2019/oct/29/the-fight-over-water-how-nestle-dries-up-us-creeks-to-sell-water-in-plastic-bottles
Flint water crisis: ex-governor and eight others charged after new inquiry | Flint water crisis | The Guardian
https://www.theguardian.com/us-news/2021/jan/14/flint-water-crisis-charges-rick-snyder-nick-lyon-eden-wells
フリント市民は汚染水に高額水道料 ネスレは地下水を無料で汲み上げ | Democracy Now!
https://democracynow.jp/video/20160217-5
「民主主義への渇き」 緊縮行政が引き起こしたミシガン州フリント市の深刻な水道汚染を現地取材 | Democracy Now!
http://democracynow.jp/video/20160217-1
Know the Facts about Michigan | BlueTriton Brands
https://www.nestle-watersna.com/communities/your-community/michigan/know-the-michigan-ice-mountain-facts